吹奏楽団の練習が終わり、先輩から声を掛けられたのが、今から18年と数ヶ月前だった。
当時乗っていたフェアレディを事故で潰し、落ち込んでいた日でもあったのでよく覚えている。
「そういや猫飼ってるよね?」

先輩が言うには、段ボール箱に入れられた子猫四匹、捨て猫として典型的な光景だったそうだ。
そのうち二匹は貰い手が見つかり、残された黒白の兄と茶トラの妹。
先輩の家で彼らに対面した時、小さすぎる体で声にならない声を絞り出していた。
自宅の居間で箱を開けたとき、まだ生後半年ほどのジジが大興奮していた。
威嚇するわけでもなく、手を出すわけでもなく、ただ箱の回りをうろうろしていた。
まだ歩くこともできず、目を開くこともできない兄妹は、必死に前足で母親を探していた。

初めての哺乳瓶での授乳、背中をトントンしてゲップをさせ、ひざの上で排尿を促す。
手のひらが余るほどの温もりは、その日から私の目覚まし時計になった。
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茶トラの妹が旅立ったのは、それから一週間後だった。
目も見えないまま、黒白の兄や私を確認できないまま、一人で虹の橋に。
残された黒白の兄は、それまで横に感じていた温もりを私に求めた。
小さな前足で私の顔を触り、かすれた声で私を呼び、私の左腕を枕にして眠り…
彼にとって私は親であり、妹であり、世界のすべてだったのだろう。

離乳食の頃には遊ぶようになり、毎日家の中を走り回っていた。
倍以上の体格差、プロレスで負けては泣きながら私のひざの上に登った。
そのたびに喉を鳴らし、そのままの姿で寝息を響かせていた。

「純」という名前は私が付けた。
由来は様々あるが、正直覚えていない…
ま、当時好きだった女の子がこんな名前だったような…

カアカたち一家の出現は、純にとって衝撃的な出来事だった。
元々人間の子として育った純、ジジとジロ以外の猫は恐怖そのものだったのだろう。
一家の姿を見ては追いかけ、攻撃し、その場から排除しようとしていた
ある日、鯉九郎を攻撃し、病院に搬送する車内で純を隔離することを決めた。

両親の所帯で暮らすようになった純、私は彼と会う時間が減った。
数年後には完全に母親の子となり、私と一緒に寝る時間もなくなった。
それでもひざの上で喉を鳴らす時間は、子供の頃から変わらない笑顔を見せていた。
ジジが旅立ったあと、純は一日のほとんどを寝て過ごすようになった。
食事の量も少なくなり、丸い体も背骨が浮くようになった。

「そろそろ危ないよ」
母から聞かされたのが金曜日だった。
布団の上で丸くなる純を抱き上げると、18年と数カ月前の重さを思い出した。
食事も取らず、水も喉を通らない体は、最後の力を振りしぼって喉を鳴らした。
開かない瞼の奥に、18年と数ヶ月前の光を感じた。
翌朝、純は虹の橋に旅立った。

きっと今は、虹の橋でジジやジロと遊んでいるのだろう。
そして誰よりも、段ボール箱の中で励まし合い、暖め合った妹のネネに再会しているのだろう。
ただ、当時はお互いに目が見えなかったた…初めて見るその姿に、照れ笑いを浮かべているのかもしれない。
...All done!
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